土地売却依頼の確認事項
土地の売却はマンションや一戸建ての売却よりも、売却方法が多様です。
古屋付き土地の場合、相続した土地の場合など、さまざまケースが考えられます。
これらの売却に共通するのはすべて事前準備がとても大切ということです。
不動産会社に売却を依頼する前の確認事項を、売却におけるアドバイスと一緒に紹介します。
1.希望する売却価格とスケジュールを整理する
はじめに土地売却で押さえておきたいポイントを紹介します。
土地の売却の大まかな流れはマンションや一戸建ての売却と同じです。
しかし、売却する土地に古家(古い住宅)が建っている場合は、建物付きのまま売却するか、建物を解体して更地の状態で売却するかを考えなくてはいけません。
土地を売ろうとするとき、そこに古い建物が建った状態にあることは珍しくありません。
日本では、木造住宅における税法上の耐用年数が22年と定められているため、築年数によっては建物の価格がゼロに近くなってしまうため、結果的に建物付き土地の売却というのは、「0円の建物と合わせた土地の売却」になっているケースがほとんどです。
こういった築年数の経過により価値のなくなった一戸建てを、「古家」と言います。
古家をそのまま土地と共に売却するか、解体して更地で売却するかで、それぞれメリットとデメリットがあります。
●古家付き売却の場合
<メリット>
・解体費用を買主に負担してもらえる場合がある、自身で解体を行う手間が省ける
・売却までの間、固定資産税・都市計画税の軽減措置を受けられる場合がある
(住宅用地で課税標準を1/3に減額し、小規模住宅用地(200平米未満の部分)は1/6に減額される)
<デメリット>
・古家も内覧の対象となる場合があるため、メンテナンスが必要になる
・解体費用分の価格交渉を受ける場合がある
●更地で売却の場合
<メリット>
・買主が土地の区画形質を確認しやすい
・建物のメンテナンスを行う必要がなくなる
<デメリット>
・残置物撤去や樹木を含む動産の撤去費用がかかる
・軽減措置が受けられなくなる
こういった土地売却ならではのパターンも理解したうえで、ご自身が土地を売却する目的を意識して、希望する価格とスケジュールをイメージしていきましょう。
希望価格を出すためには、相場を知らないと始まりません。
土地相場は、「実勢価格」「公示地価/基準地価」「相続税評価額(相続税路線価)」「固定資産税評価額(固定資産税路線価)」を見て調べることができますが、実勢価格は周辺の売買事例や取引事例を確認することで大まかに把握することができますが、土地の価格は個別性が高いため、ご所有不動産の実勢価格を把握するには価格査定を依頼しましょう。
国土交通省の『不動産情報ライブラリ』では、不動産の取引価格、地価公示等の価格情報や防災情報、都市計画情報、周辺施設情報等、不動産に関する情報をご覧になることができます。
2.諸費用を確認する
土地売却には各種税金と費用が発生します。
なにがどのくらい必要なのか、事前に把握しておきましょう。
●仲介手数料
売却活動を仲介した不動産会社に支払う手数料です。
仲介手数料の上限額(売却価格400万円超の場合の上限額):売却価格×3%+6万円+消費税
●不動産売買契約書に貼る印紙代
売却価格によって印紙代は異なります。
令和9年3月31日まで不動産取引にかかる印紙税の軽減措置があります→国税庁『不動産売買契約書の印紙税の軽減措置』
●ローンの抵当権抹消費用
売却する住宅にローンが残っている場合、金融機関の抵当権を抹消する必要があります。
そのときに支払う税金が登録免許税で、土地・建物1件につき1,000円です。
その他、登記を依頼する司法書士に支払う費用が数万円程度発生します。
●登録免許税
登録免許税は抵当権の抹消登記のほかに、所有権を買主様に移転する所有権移転登記の手続きにもかかります。
一般的には買主様が負担しますが、契約により折半したり売主様が負担する場合もあります。
●譲渡所得税
土地の売却で利益が出た場合に支払う所得税と住民税。
売却益の約14~40%程度を支払います。
●測量費用
土地の売却で必要となる場合があります。
土地購入後のトラブルを防ぐなら、隣地との境界線を確定する必要があります。
また、測量した年月が古い場合も測量が必要なケースがあります。
それらの際には、土地家屋調査士に依頼をするために費用が発生します。
なお、一般的には隣接地との境界を明示することが必要になるため、境界標が見当たらない場合は測量及び境界標の設置が必要となります。
測量方法にも種類(確定測量など)があり、費用や必要な期間が変わってきます。
●解体費用
古い建物を解体して更地で売却するには、解体費用がかかります。
建物の構造と坪数によって異なります。
また室内や室外(庭)などにある動産も撤去や処分の対象となる場合がありますので、その際は費用が必要になります。
●繰り上げ返済手数料
残っているローンを一括返済するときに金融機関に支払う手数料です。
その他、工場などが建っていた土地を売る場合は土壌汚染調査、住宅用地として使用していなかった土地を住宅用地として売却する場合は水道引込工事など、その他の費用が発生する場合もあります。
建物解体や残置物撤去の見積もりは早めにとりましょう。
3.必要書類が手元にあるか確認する
売却に必要な書類も早めの準備を心がけましょう。
●本人確認資料
運転免許証やパスポートなどの本人確認書類。
●実印
売買契約時に必要。
共有者がいる場合は共有者全員分。
●印鑑証明書
売買契約時に必要。
発行から3ヶ月以内のもの。
共有者がいる場合は共有者全員分。
●住民票
発行から3ヶ月以内のもの。
土地の住所と売主様の現住所が異なる場合に必要。
●権利証または登記識別情報通知書
土地の内容確認や登記の際に必要。
法務局から登記名義人に対して発行される。
●固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書
固定資産税と都市計画税の税額調整に必要。
●登記簿謄本
法務局に備えつけてある「不動産用登記事項証明書または登記簿謄本・抄本交付請求書」のこと。
●その他
地積測量図・境界確認書、建築確認済証、地盤調査報告書、購入時の契約書・重要事項説明書、(リフォームをした場合)リフォーム履歴の分かる資料など。
土地の売却の場合でも、古家がある場合は建物も売買対象になります。
瑕疵(かし)や告知事項が無いかは事前に確認しましょう。
また測量図が古い場合は、土地家屋調査士に測量を依頼して再作成する場合があります。
4.土地(建物)の状態や権利関係等の確認
土地を売却する前に、土地(建物)の状態や権利関係の現状把握をしておくことが大切です。
以下に確認事項を記載しますが、複雑で専門性も高いため不動産会社に問い合わせた際に依頼しましょう。
土地の状態や権利関係については、不動産登記で確認しましょう。
登記内容が記された登記簿謄本(登記事項証明書)は法務局で取得できます。
登記簿謄本には土地の区画や面積などが記載されているため、土地取得当時と違いがないかを確かめましょう。
登記簿謄本は表題部と権利部という2つの区分に分かれており、権利については権利部に記されています。
甲区には所有権に関する事項が、乙区には抵当権や賃借権などの所有権以外の権利に関する事項が書かれています。
不動産登記は土地だけでなく、建物にもあります。
過去に建っていた建物を解体して更地にしても、建物の登記が残っている場合があります。
この場合には建物の滅失登記が必要になります。
また、建物に接する前面道路の種類についても確認が必要です。
特に道路には公道と私道の区別があることは注意しておきたいポイント。
前面道路とは、土地建物の敷地に2m以上接する建築基準法で認定された道路を指します。
接道義務を満たしていないと、建築物を建築することができないので、土地の評価が下がってしまいます。
ただし、この接道義務は、都市計画区域および準都市計画区域内でのみ適用されます。
【道路の種類】
●建築基準法第42条1項1号道路
道路法による道路(国道・都道・区道などの公道)
●建築基準法第42条1項2号道路
都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法などでできた道路(開発道路)
●建築基準法第42条1項3号道路
建築基準法施行時(昭和25年11月23日)に既に存在していた道(既存道路)。公道、私道の別は問わない。
●建築基準法第42条1項4号道路
都市計画法などの法律により2年以内に事業が行われる予定のものとして特定行政庁が指定したもの(計画道路)
●建築基準法第42条1項5号道路
土地を建築敷地として利用するために新たにつくる私道で、特定行政庁から指定を受けたもの(位置指定道路)
●建築基準法第42条2項道路
建築基準法施行時に既に存在する幅員4m未満の道で特定行政庁が指定したもの(細街路、2項道路、みなし道路)。公道・私道の別は問わない。
周辺が私道に接した土地を売却する場合は、通行・掘削承諾書が必要なケースがあります。
掘削承諾書は、売却した土地に買主様が新しく建物を建てるとき、水道・ガス・下水の工事で道路を掘削するため必要になります。
土地建物の状況について、もう一つ注意したいのが隣地への越境がないかどうかです。
多くは売却のために測量したときに、自分の土地が隣地へ越境している、または越境されていることが判明します。
不動産売買では大きく分けて、越境物の撤去か、撤去できない場合は隣地所有者との間で覚書を交わし、新しい所有者である買主様に内容を引き継ぐ方法が取られています。
大切なのは、売主様が知りえる土地の状況を不動産会社に正確に報告することです。
雨漏りやシロアリの害、境界の越境や残存物などの契約不適合責任などについては、買主様とのトラブルを避けるため事前に報告しなければなりません。
売買の目的物に契約内容と異なる点があった場合に、売主様は買主様に対して契約不適合責任という責任を負わなければいけないことは、覚えておきたいところです。
5.共有者がいる場合
売却する土地に共有者がいる場合には注意点があります。
土地の所有者が複数いる共有名義の場合、全員の売却意志がないと売ることができません。
共有名義とは、不動産を取得するために共同で出資し、出資額の割合に応じた所有持分で登記(権利関係などを社会に公示するため登記簿に記載)することです。
6.相続する場合/相続した場合
身内から相続した土地を売却するケースも多いです。
相続した土地の場合は、所有者の名義がきちんと売主様に変更されているか、確認しましょう。
たとえ親から土地を相続しても、相続登記をして名義人の変更をしておかないと、買主様への移転登記ができないため売却もできません。
ですので、相続した土地を売却する場合は必ず、相続登記をしておく必要があります。
相続登記に必要な書類は、登記申請書、戸籍謄本や除籍謄本、住民票、印鑑証明書などです。
これらを法務局に提出して手続きしますが、かなりの労力が必要なので、司法書士や土地家屋調査士などの専門家に依頼して手続するのが一般的なケースです。
ただし、手数料として十数万円程度を要します。
また、相続していない土地を売却する際は、売却するタイミングについても「相続が発生する前と後の売却どちらがいいのだろう?」と悩む場合があります。
どちらにどのようなメリット・デメリットが発生してくるのかを理解しましょう。
●相続前売却の場合
<メリット>
不動産の相続発生後は、その分割方法を巡って家族間で争いごとが起こりやすい傾向があります。
そのため相続発生前に売却して事前に現金化しておくことで、相続する人の間で分割しやすくなるメリットがあります。
<デメリット>
相続時には相続資産に応じて相続税がかかりますが、土地を相続するよりも現金を相続する方が多くの相続税がかかる場合があります。
●相続後売却の場合
<メリット>
不動産を相続後に売却することで、現金で相続するよりも節税できる場合があります。
まず、相続後に不動産を売却した場合にも、一般的な不動産売却時と同様に利益に対して譲渡所得税がかかります。
しかし、「相続開始から10ヶ月後の翌日から3年以内」に相続した不動産を売却した場合、支払った相続税のうちその不動産にかかる部分の相続税を「取得費」として加算できる特例制度があります。
<デメリット>
相続人が複数の場合、売却手続きが複雑になる傾向があります。
もしも相続人全員で土地を共有財産とした場合、売却時には相続人全員の同意が必要となり、相続前の売却よりもスムーズにはいかないでしょう。
どちらが自分にあっているか分からない場合は、不動産会社に相談しましょう。
全日本不動産協会発行の『家を売る。』ガイドブックもご活用ください!