【無料相談】賃貸経営の基礎知識(1)
賃貸経営の一般知識
みなさま、こんにちは。
株式会社五識 代表取締役の田中臣治です。
ご相談に来ていただけるだけでも、本当にありがたいです。
今日のご相談は、サブリースについてです。
兼業農家(サラリーマン・稲作)のAさんからです。
Aさんは数年前に約2反(約2000平方メートル)の水田を相続されました。
あと10年弱で定年退職を迎えられるそうで、定年後は1反分を残して、1反を売却しようかどうしようかと悩んでいらっしゃいました。
すると、どこかから聞きつけたのか、大手の建築会社や某賃貸専門業者などから営業の電話や資料送付がはじまりました。
Aさん自身も、定年後はできるだけのんびりしたいと考えていらっしゃったので、定期的な家賃収入がある賃貸経営を考えるようになったそうです。
しかし、最近、新聞やネットニュースでは、サブリースや賃貸経営で苦しくなった人々の状況が取り上げられることが多くなりました。
それを見たAさんは、どうしたものかと相談にいらっしゃいました。
一時期、テレビコマーシャルでも、一括借り上げやサブリースといった賃貸経営方式がよく放映されていました。
そこでもメリットが謳われていましたし、Aさんもかなりご存知でした。
そもそも、サブリース(一括借り上げ)とは、
オーナーが建てたアパートなどを一括で借り上げて、毎月一定額の賃料をオーナーに支払う、(「転貸」)というものです。
主なメリット
- 賃借人(転借人)とのお金のやり取りをしなくて良い。→未払いや請求にわずらわされない。
- 管理費用や広告等費用の負担をしなくて良い。→オーナーが入居者の募集、修繕・原状回復等をする必要がない。
- 毎月一定額の賃料が得られる。
- 相続税等の計算がしやすい。
これだけ見ると、
何もせずにお金が入ってくるんだ!
と考えがちですが……
考えられるデメリット
1)オーナーが賃貸物件を建設しなければならない=建築費用の負担
田んぼから宅地にするためには宅地造成が必要になります。
また、水分を多く含む土のままでは、建物の基礎が傾きますので地盤改良等も必要になります。
[宅地造成費の金額表]でググってみると、国税庁のサイトから、各都道府県ごとの表が出てきます。
福岡県では……
整地・地盤改良を1000平米分おこなうと、単純計算で250万円。
50m×20mの角地と仮定して土留めが70m分、約433万円。
1mかさ上げするとして1000立米分、単純計算で710万円。
宅地造成費用だけで、最低でも約1400万円はかかります。
どのような賃貸物件にするかによりますが、おしゃれでイマドキな建物であれば、億単位の費用負担を覚悟しなければなりません。
2)募集家賃≠オーナーの収入
立派なアパートが建築されました。
1室10万円で募集広告が出ています。
あっという間に10室満室になりました。
しかし、オーナーは毎月100万円手に入れることはできません。
管理・広告・修繕などはサブリース会社がおこなうわけです。
一般的に、オーナーには満室家賃の8割が支払われるといいます。
一時期マスコミを賑わせたサブリース問題は、
「満室ではないから8割も払いません」
「○○費、○○費、○○費などで2割負担してください」
「経年劣化で募集家賃がさがりますので支払額も下がります」
などと、後出しじゃんけん並みに、ズル賢いやり方でボロ儲けした会社が存在した(今も残っている)のです。
もともと資産家ということであれば、痛くも痒くもないかもしれません。
しかし、現実には、建築費用等が支払えず、任意売却せざるを得なくなったり、抵当権が実行されたりして、住む家も何もかも失った……という人も存在します。
デメリットの補足
1)の内容の補足ですが、どこに建築を依頼するのかで大きく変わります。
「億単位の費用負担」と書きましたが、良心的な建築会社に依頼すれば、品質も良く、費用はかなり抑えられます。
気をつけていただきたいのは、宅地造成から物件管理まで一括して「任せてください!」という企業です。
企業の立場に立ってみましょう。
家賃収入は、8割方オーナーに流れていきますので、ほぼ期待できません。
(それでも家賃の2割+敷金+礼金+手数料+○○料など請求する場合あり)
あなたがこの会社の社長なら、どこで儲けますか?
宅地造成や建築費用などですよね?
宅地造成は上記のような基準がありますが、建築費用はだれが見積もりますか?
一般人は設計図を見てもわかりませんし、わざとらしく専門用語を使うので、もっとわからなくなります。
説明を聞いて『あー、はい、はい。へー、そーなんですねー』と言っているうちに、億単位に跳ね上がるんです。
さらに悪質な企業は、断熱材や構造上必要な材料を、勝手にサイズ変更したり、中抜きしたりします。
(この企業は倒産しましたので、オーナーさんは泣き寝入りです)
2)の内容の補足ですが、自分でできることは自分でやってみる、というのも手です。
- 10室満室で80万円 or 8室入居で80万円
- 知らない人10人 or 自分が面接した人8人
- 敷金は管理会社へ or 敷金は自分が管理
- 修理修繕他人任せ or 修理修繕は自分でやる
お金の管理も修理修繕も、何もしたくない! という方は一括借り上げシステムを利用した方がいいと思います。
ただ、支払いの免責期間や上記のような追加の支払い等は考えておく必要があります。
一方、設計図の段階から一緒に物件を造っていくことで、愛着がわいてきますし、修理修繕も判断しやすくなります。
愛着がわいた建物に、見ず知らずの他人を住まわせるよりも、入居希望の段階でヒトトナリがわかっている人物を住まわせる方がいいでしょう。
また、100円ショップに売っている出納帳を11冊買ってきて、各部屋ごとの入出金状況を管理するだけでも、立派な管理ですし「脳活」にもなります。(1冊は全体にかかる費用、固定資産税などの計算に使う)
と、このようにAさんにはおおまかなメリットとデメリットをお伝えしました。
Aさんの土地は、利便性がよいので、月極駐車場や事業用定期借地でも良いのではないかと提案しました。
もちろん良心的な管理会社やサブリース会社もあります。
甘い言葉に誘われて、1社だけに決めるのではなく、見比べ・聞き比べ、自分や家族が納得できるカタチで賃貸経営を考えると良いと思います。
ご覧いただき、ありがとうございました。
またお会いしましょう。